マガジンのカバー画像

沢野ひとし【もう一度あの町に行こう】

30
イラストレーター・沢野ひとしさんが、これまでの人生を振り返り、今、もう一度訪れたい町に思いを馳せるイラスト&エッセイです。再訪したり、妄想したり、食べたり、書いたり、恋したりしな… もっと読む
運営しているクリエイター

#もう一度あの町に行こう

夢の”最後の晩餐”/沢野ひとし

 ジジイの朝は早い。日の出と共に起床する。この三十年間まったく変わらず、夏は四時起き、冬…

私の「小田原日帰り旅」の定番/沢野ひとし

 町田に住んですでに五十年近くになるが、何かというと小田急線で小田原に出かけていた。まず…

私はこれで、スキューバをやめました/沢野ひとし

 スキューバダイビングに夢中になっていた三十代の終わりの頃、沖縄の那覇を起点に、年に二、…

兄が教えてくれた新宿・紀伊國屋書店とカキフライの楽しみ/沢野ひとし

 初めて入ったレストランは、新宿三越の横の西洋料理店である。私が小学六年生で、兄は高校三…

八戸は旨い店と仲間に出会える町/沢野ひとし

 八戸(はちのへ)は青森県南東部、太平洋に面する市。東北地方東岸屈指の港を持ち、水産業が…

青森で「ホヤ」が呼んでいる/沢野ひとし

 青森ほど、ねぶた祭りの「ラッセ、ラッセ」の掛け声の如く、勢いをつけて通い詰めた町はない…

春は京都が待っている/沢野ひとし

 京都の旅はいつも南区九条町の『東寺(教王護国寺)』からスタートする。  東寺の建立は796(延暦15)年、623(弘仁14)年には嵯峨天皇より弘法大師空海に下賜され、以来、真言密教の根本道場として栄えた。日本最大の五重塔、南大門、金堂、講堂、食堂(じきどう)など、荘厳な建造物群や、21の仏像からなる立体曼荼羅の威容に圧倒される。  私は東寺の職員と親しくなったことで京都の歴史を勉強することができた。  仏像は時代の移り変わりに応じて、並べ方を替えたり、別の寺院と交換したり

もう一度行きたい清い水の町、松本/沢野ひとし

 町の中に井戸や水路がある土地に惹かれる。清い水を見ると、こちらの心も澄んでくる。初めて…

トランクはもうひと回り小さめに/沢野ひとし

 日常から逃れられる海外旅行は、準備の段階から気分が一気に上がるものだ。旅に出ると決まれ…

何度でも行きたい小川山のキャンプ場/沢野ひとし

 2020年は新型コロナウイルスに翻弄された一年であった。毎朝、新聞を開くたびに「また増えた…

家族スキーの変遷/沢野ひとし

 高校生の頃から、山登りとスキーに夢中になっていた。学業を怠り、山岳書を読みふけり、山に…

谷川俊太郎さんの北軽井沢の真四角の家/沢野ひとし

 今年の夏、近くに用事があったので、久しぶりに北軽井沢の谷川俊太郎さんの別荘を、そっと偵…

伊香保温泉・榛名山へ行こう/沢野ひとし

 二十数年ぶりに群馬県・伊香保温泉へ妻と旅に出た。あたりは紅葉が真っ盛りで、空は高く澄み…

国立には特別な思いがある/沢野ひとし

 赤い三角屋根駅舎が有名な国鉄(当時)中央線国立駅に、はじめて降りたのは二十歳の頃であった。大学時代の同級生で、好きな女性が国立に住んでいた。今からすでに五十五年も前のことである。その頃の国立は、郊外のひっそりとした町であった。当時、彼女と週に一度は文通をしていた。きちんと文字を書く人なので、こちらも緊張して封筒の宛名を書いていた。  三角屋根駅舎まで自転車で来た彼女と、国立の町をよくデートしていた。一橋大学構内の庭や喫茶店のロージナ茶房で、何時間も取り留めのない話をしてい