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沢野ひとし【もう一度あの町に行こう】

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イラストレーター・沢野ひとしさんが、これまでの人生を振り返り、今、もう一度訪れたい町に思いを馳せるイラスト&エッセイです。再訪したり、妄想したり、食べたり、書いたり、恋したりしな… もっと読む
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夢の”最後の晩餐”/沢野ひとし

 ジジイの朝は早い。日の出と共に起床する。この三十年間まったく変わらず、夏は四時起き、冬…

私の「小田原日帰り旅」の定番/沢野ひとし

 町田に住んですでに五十年近くになるが、何かというと小田急線で小田原に出かけていた。まず…

兄が教えてくれた新宿・紀伊國屋書店とカキフライの楽しみ/沢野ひとし

 初めて入ったレストランは、新宿三越の横の西洋料理店である。私が小学六年生で、兄は高校三…

八戸は旨い店と仲間に出会える町/沢野ひとし

 八戸(はちのへ)は青森県南東部、太平洋に面する市。東北地方東岸屈指の港を持ち、水産業が…

青森で「ホヤ」が呼んでいる/沢野ひとし

 青森ほど、ねぶた祭りの「ラッセ、ラッセ」の掛け声の如く、勢いをつけて通い詰めた町はない…

春は京都が待っている/沢野ひとし

 京都の旅はいつも南区九条町の『東寺(教王護国寺)』からスタートする。  東寺の建立は796…

もう一度行きたい清い水の町、松本/沢野ひとし

 町の中に井戸や水路がある土地に惹かれる。清い水を見ると、こちらの心も澄んでくる。初めて松本の町を散歩したのは、北アルプスに登った帰りだった。五十年ほど前のことである。  高砂通りを歩く。「あっ、こんな所に大きな井戸が」。近寄るとそこは『源智の井戸』と呼ばれていた。水質が良いのか豊富に湧き出る水を、近所の夫人や子どもたちがやって来ては、大きなペットボトルに一心不乱に汲んでいた。  順番待ちをしているおかみさんに声をかけると、その水は江戸時代からずっと枯れることがなく、庶民

トランクはもうひと回り小さめに/沢野ひとし

 日常から逃れられる海外旅行は、準備の段階から気分が一気に上がるものだ。旅に出ると決まれ…

何度でも行きたい小川山のキャンプ場/沢野ひとし

 2020年は新型コロナウイルスに翻弄された一年であった。毎朝、新聞を開くたびに「また増えた…

家族スキーの変遷/沢野ひとし

 高校生の頃から、山登りとスキーに夢中になっていた。学業を怠り、山岳書を読みふけり、山に…

谷川俊太郎さんの北軽井沢の真四角の家/沢野ひとし

 今年の夏、近くに用事があったので、久しぶりに北軽井沢の谷川俊太郎さんの別荘を、そっと偵…

伊香保温泉・榛名山へ行こう/沢野ひとし

 二十数年ぶりに群馬県・伊香保温泉へ妻と旅に出た。あたりは紅葉が真っ盛りで、空は高く澄み…

国立には特別な思いがある/沢野ひとし

 赤い三角屋根駅舎が有名な国鉄(当時)中央線国立駅に、はじめて降りたのは二十歳の頃であっ…

鶴舞公園にもう一度行こう/沢野ひとし

 私が生まれたのは名古屋の鶴舞(つるま)公園の近くである。両親は洋裁学校の経営と本の出版で大成功を収め、戦後、東京に進出してきた。  鶴舞公園の中心地にルネサンス風の奏楽堂があり、かつては演奏会も開催された。現在見られる形は屋根がドームのように丸く、これは明治43年(1910年)の創建当時のデザインを、平成9年(1997年)に復元したものである。ところが、母が写った色あせた写真を見ると、屋根が平らであり、昭和9年(1934年)の室戸台風で崩壊した後に建てられた、二代目の奏楽