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沢野ひとし【食べたり、書いたり、恋したり。】第11回 押し寿司の季節がやって来た。

 我が人生はずっと押されっぱなしの日々であった。積極的に自分から押すのは、二ヶ月に一度の押し寿司くらいのものであった。長方形の木型にすし飯を詰めて、魚介をのせるこの押し寿司には、私の屈折した幸せがぎっしり詰まっている。押し寿司のうれしいところは、手作りの家庭料理ということにつきる。

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