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もう一度本場の餃子を食べたい/沢野ひとし

 今年の三月に北京に行く予定になっていた。十三年間我が家にいた犬の思い出を綴った『クロ日記』(本の雑誌社)が、北京の出版社で翻訳されることになり、それも楽しみにしていた。さらになによりも無性に本場の餃子を食べたかった。
 だが新型コロナウイルスの蔓延で、すべてがキャンセルになってしまった。中国も日本も世界中が冬眠する動物のごとくじっと自宅待機をして、コロナの嵐が過ぎ去るのを待つしかない。

白湯のもとイラスト


 北京の知人とメール交換をすると、やはりお気に入りの店へ出かけて餃子が食べたいと悶えている。私も何度か北京に行き「この店」「あの店」と餃子名店をしぼり込んでいた。
 日本の焼き餃子は餡の種類が少なく、油を使うので、食べ過ぎると胸焼けがする。だから最近は敬遠気味である。
 北京で餃子といえば水餃子であり、あくまで主食なので、日本のような薄い皮より、いくらかもっちりした弾力のある厚い皮が好まれる。

餃子いろいろ


 私が選ぶ餃子の餡は、ブタ肉と白菜、ブタ肉とニラ、トマトとタマゴと、中国ではいたってポピュラーなものである。そしてセロリやインゲンの野菜餃子に手が伸びる。どんと皿に盛られた湯気の上がった餃子に、思わず拍手を打つ。
 タレは黒酢に軽くコショウを振る。主食だからひたすら無心に食べてゆく。おかずはナスの炒め物か、ジャガイモの千切り炒めである。
 時々、北京人のマネをして、生のニンニクを丸かじりして白湯を飲む。そのうえ、餃子を茹でた汁をもらって飲む。日本のソバ湯と同じようなものだ。

おなかいっぱい


 日本の焼き餃子に慣れた人にとって、お湯で茹でただけの水餃子は、最初は戸惑うものかもしれない。しかし水餃子には、素材が生きた素朴なおいしさがあり、やがて本場の餃子のとりこになるはずだ。
 今は早く北京に行けるようにと願うばかりである。

またお目にかかりましょう

イラストレーター・沢野ひとしさんが、これまでの人生を振り返り、今、もう一度訪れたい町に思いを馳せるイラスト&エッセイです。再訪したり、妄想したり、食べたり、書いたり、恋したりしながら、ほぼ隔週水曜日に更新していきます。

文・イラスト:沢野ひとし(さわの ひとし)/名古屋市生まれ。イラストレーター。児童出版社勤務を経て独立。「本の雑誌」創刊時より表紙・本文イラストを担当する。第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。著書に『山の時間』(白山書房)、『山の帰り道』『クロ日記』『北京食堂の夕暮れ』(本の雑誌社)、『人生のことはすべて山に学んだ』(海竜社)、『だんごむしのダディダンダン』(おのりえん/作・福音館書店)、『しいちゃん』(友部正人作・フェリシモ出版)、『中国銀河鉄道の旅』(本の雑誌社)、絵本「一郎君の写真 日章旗の持ち主をさがして」(木原育子/文・福音館書店)ほか多数。趣味は山とカントリー音楽と北京と部屋の片づけ。電子書籍『食べたり、書いたり、恋したり。』(世界文化社)も絶賛発売中。
Twitter:@sawanohitoshi


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