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スギアカツキ【たまごのはなし】第10回 「たまご入りパスタ」がおいしい理由を考える

最近ハマっている食材があります。それは、「たまご入りパスタ」。名前通り、“たまご”が練り込まれたパスタなのですが、これがしみじみおいしい。いつも食べているスパゲッティとは全く違う食感・味わいで、ラグーやキノコクリームなどの濃厚ソースと合わせて食べると、ごちそう感がぐんと高まります。

どんなものかというと、日本で購入しやすいのは、タリアテッレ(Tagliatelle)もしくはフェットチーネ(Fettuccine)と呼ばれる“きしめん状の幅広パスタ”を乾麺にしたもの。

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フェットチーネは「小さなリボン」という意味で、たまごのほか、野菜(ほうれん草・トマト)や果物(ラズベリー)などを練り込んで作られることが多いため、その美しい色とビジュアルにうっとりしてしまいます。

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ゆで方は普通のパスタと同様なので扱いも簡単。ゆでたての黄金色が、料理人のテンションを上げてくれることでしょう。

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食べてみると……。ツルツルではなく、モチモチモソモソ。喉ごしは決していいとは言えず、洗練というよりは素朴な食感です。それが何度か食べるうちに、意外にも口の中でのしっかりとしたその独特の存在感が忘れられなくなり、かみしめて味わうごとにたまごの力強い滋味深さを感じます。そして気がついたら私の中では、お気に入りの味、いや、心に深く残る味になっていたのでした。

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このたまごパスタの発祥を調べたところ、イタリアの気候による産物だということを知りました。イタリアは、長靴形でおなじみ、南北に延びるタテ長の国。つまり、北と南では地質・気候が違うため、パスタの原料となる「小麦」の特徴にも違いが出てきます。南部で採れる硬質小麦は、“セモリナ粉”と呼ばれ、水で練るとなめらかツルツルに。北部のものは粘りが強いために水では成型しづらく、まとまりやすくする改善策として、手に入りやすかった「卵」が練り込まれるようになったそうです。

ちなみに北イタリア本場では、乾麺よりも“生”が主流。また、カニやエビといった甲殻類をはじめアドリア海で捕れる新鮮な魚介類がおいしいとされるヴェネト州では、アヒルのたまごを使う「ビゴリ」というユニークなたまご麺(使われる小麦は、現在は軟質小麦や全粒粉)が名物なんだとか。

ふー、こんな話を聞いたら、“たまごパスタ熱”がますます上昇。その情熱までも、モチモチとゆであがってきたように感じる今日この頃です。


文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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スギアカツキ【たまごのはなし】
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「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げる連載です。

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