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【全文公開】『京都 古民家カフェ日和』刊行記念!④ シリーズ・東京版の本文を2軒公開します/竹むら

川口葉子さん著京都 古民家カフェ日和(4月16日刊)の発売を記念して、「古民家カフェ」シリーズの本文を無料公開します。

\全5回連載/
最新刊の京都から2軒、シリーズ前作の東京 古民家カフェ日和から2軒に、取材こぼれ話を加えて、全5回連載の予定です。

なかなか遠出しづらい状況ですが、美しい写真を眺めながら、カフェめぐりを追体験いただけたら幸いです。

本記事では、シリーズ前作・東京版から、2軒目のお店をご紹介します。

\4月16日発売!/

\東京版も好評発売中/

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竹むら

老舗の甘味処の佇まいに息をのむ

〈神田〉

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 神田須田町、かつて神田連雀町と呼ばれたあたりは、苛烈な空襲を免れた奇跡の一角。大正時代から昭和初期に開業した飲食店が昔と変わらぬ姿で暖簾(のれん)をひるがえしている。

「母は『近くにニコライ堂があるから爆弾を落とされなかった』と言ってました」と笑うのは、一九三〇年創業の甘味処「竹むら」三代目の堀田正昭さん。母親はすぐ近くの老舗「かんだやぶそば」の娘だった。

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「ここを建てたのは神田佐久間町の大工さんで、近くの『ぼたん* 』も同じ大工さんと聞いています」
*ぼたん…明治時代創業の「鳥すきやき」専門店。東京都選定歴史的建造物
 毎日、北海道産の小豆で四種類のあんを炊く。おしるこもあんみつも伝統の製法を大切に受け継いでいる。「創業した父は、とにかく手を抜かずにいいものを作れ、店を広げるな、という方針でした」

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 名物の揚げまんじゅうは「たとえお客さまにお待ちいただいても揚げたてをさしあげろ」という父の口癖通りに、注文を受けるつどゴマ油でからっと香ばしく揚げる。
 そんな味と風情に惹かれ、池波正太郎が竹むらに通っていたのは有名な話である。

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「お一人でいらして、人目につかない奥のテーブルで召し上がって、すっと帰られる。ご自分の時間を楽しまれているので声をおかけしませんでした」という心づかいも作家に愛される所以(ゆえん)だったのだろう。

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「今日は寒いから、あんは柔らかめに」などと天候によって毎日微妙に仕上げを調整する職人仕事が好きだ、と堀田さんは語る。お客さまの「おいしかった」というひとことで多少の苦労は吹き飛んでしまうそうだ。

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※ 1930年から続く本店は、本書で定める古民家カフェ= 「古民家を転用・再生したカフェ」ではありませんが、貴重な建物を残すお店として掲載しております

本コラムは全5回連載します(本記事は4回目です)。
次回は4月19日の週にお届けします。お楽しみに!
※3日目の記事はこちら

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川口葉子(かわぐち ようこ)
ライター、喫茶写真家。全国2,000軒以上のカフェや喫茶店を訪れてきた経験をもとに、多様なメディアでその魅力を発信し続けている。
著書に『京都 古民家カフェ日和』『東京 古民家カフェ日和』(世界文化社)、『京都カフェ散歩 喫茶都市をめぐる』(祥伝社)、『東京の喫茶店』(実業之日本社)他多数。