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スギアカツキ【たまごのはなし】第38回 おいしい卵探しで出合った「ホシノブラック」3つのおいしさの秘密

東京・青山で週末に開催されている「ファーマーズマーケット」に足を運んだ時のこと。いつもは無農薬・無肥料の「野菜」を目当てに出かけることが多いのですが、今回は「(これまで食べたことのない)おいしい卵がないかなあ?」とぶらぶらしていたところ、ある卵に出合いました。

ホシノブラック。

えっ、何が黒いのだろう? もしや黒い卵!? などと1人で盛り上がりつつ、養鶏場「セオリファーム」の代表、笹井賢也さんに話を伺うことにしました。

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ホシノブラックとは、正式には「ホシノブラック1」という静岡県の「とりっこ倶楽部ホシノ」によって生み出された「黒い鶏」の品種のこと。

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太陽の過剰な光線を吸収しやすい黒色素(メラニン)の強い鶏ほど、たくましく、生命力にあふれたおいしい卵を産むこと。卵黄比率が一般の他の卵に比べて約10%高いこと。などが特長だそうです。このホシノブラック1をセオリファームの笹井さんが購入し、独自の養鶏スタイルで生産しているのが、「蔵王じゅうねん卵(ホシノブラック)」なのです。

笹井さんいわく、卵の“味”自体は、飼料によってほぼ決まり、卵黄比率の高さや元々持っている高い栄養バランスを活かしながら、おいしい卵を生産しているそうです。それでは笹井さんの3つのこだわりをご紹介しましょう。

1.平飼い飼育環境へのこだわり
卵のクオリティは鶏の“住環境”によって7~8割が決まる。最近注目されている「平飼い」の中でも、広い面積でのびのび育てることで、ストレスを与えないようにしている。
※1坪あたりの鶏数
通常の平飼い養鶏場→約40羽
セオリファーム→6.5羽

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2.飼料へのこだわり
住環境に次いで大事なのが、「飼料」。市販の配合飼料を使用せず、100%国産、保存料・着色料を一切使わない、遺伝子組み換えや収穫後の農薬の心配がない作物を使って飼料を手作りしている。「じゅうねん」とは健康オイルとして有名になった「えごま」のことで、えごまを豊富に使用して自家配合している。卵を割った時の、レモンイエローがその証。

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3.きれいな天然水で
鶏達の飲み水は、塩素の入った水道水ではなく、蔵王町の名水「恵水不動」の湧き水。蔵王山麓から湧き出るミネラルたっぷりな森の恵で、健やかな鶏を育む。


そして、笹井さんに「おいしい卵」とはどういうものなのか、を聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。

おいしい卵とは……
安心安全は当たり前。それよりも、生命力の強い卵がおいしい卵というより、良い卵だと思います。 セオリの卵は優しくて少し甘い味です。ガツンとインパクトはありませんが、また食べたくなる卵ではないでしょうか!

オススメの食べ方は、“半熟卵”とのことで、私も実際に半熟目玉焼きを作っていただいて、食べてみることに。

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一口食べてすぐに気がつくのは、濃厚な味わい(これは確かに感じますが、他でも実感することが多い)よりも、「卵臭さを感じない」ということ。純粋なレモンイエローの色彩も相まって、ピュアな味わいが口に広がります。また、加熱した白身の弾力が非常に強く、食べ応えがあることもしっかり実感できました。

また一つ、おいしい卵を知った私。こういう出合いを長く大切にしつつ、卵を愛する人生は続きます。

【セオリファームについて】
宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉字七日原140-1
https://seorifarm.com/
電話・FAX:0224-26-6484
※通信販売あり


文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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