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コロネカフェはじめました/新井由木子

 草加駅にほど近いsoso cafeは、おむすびを販売していましたが、この度リニューアルして、『コロネカフェ』SOSOCAFEになりました。全体のプロデュースはカフェ・コンバーション店主(以下コンバーション)です。

 なぜコロネなのかというと、美味しさと見た目の可愛らしさだけでなく、語感が素晴らしいからだとコンバーションは力説します。経営するカフェ・コンバーションでは、分厚いほっとけーきが人気だけれど、いつかコロネも手掛けたいと、常々思っていたのだそうです。

 諸事情から、いきなり半年前に準備は始まり、事業計画やメニュー開発で忙しいコンバーション。わたしはロゴの制作(コンバーションの言うがままに形にしただけですが)や、印刷物の製作を手伝いました。
 あろうことか開店直前になって、そっくりな名前のウィルスが世界を震撼させることになり、暗澹(あんたん)たる気分になりましたが、幸いなことに3月に開店したコロネカフェこと新生SOSOCAFEは、滑り出し好調です。

 甘いものはしっかり甘く。コーヒーの香りを大切に。野菜の味わいを丁寧に引き出す。
 そしてなにより、お腹いっぱい食べるのが大好きなコンバーションの開発したメニューは、あんコロ(餡子・バター・カスタードクリーム・生クリーム)、ばなコロ(バナナ・ビターチョコレート・チョコレートソース・カカオニブ)など甘いものから、季節の野菜を使ったベジコロ(今はパクチー・赤玉ねぎ・ツナ)、ウィンコロ(ウィンナー・ザワークラウト)などなどしょっぱい系まで、種類も豊富。

 雨の日だけはお休みという営業スタイルも独特で、日によっては売り切れになってしまうほどの人気です。
 そしてわたしは日々の作業として、コロネの要ともいうべきコロネパンを運ぶ役目を任命されたのでした。

 毎朝、自宅に近いベーカリーおーぐぱんから、大量のコロネパンを受け取っては、草加宿場町通りを歩いてSOSOCAFEに向かいます。
 途中にはエコマコーヒーや洋食店アターブルバル・スバルなどの新しいお店や、薬局や動物病院や老舗和菓子屋さんなど昔ながらのお店が入り交じって建ち並び、顔見知りの店主たちや街の人々と挨拶を交わしながら歩くのも、楽しいのでした。

 ところで、コロネパンは大量なため適当な入れ物がなく、当初わたしはおーぐぱんから渡された透明の袋のまま、パンを運んでいました。その、パンが30コくらい入った袋を2つとか3つとか、両手に提げた姿を見たコンバーションが、言ったのです。
「目立ち過ぎだろ。コロネが売り切れてるのって、コロネババアが買い占めてるからって噂が立つ」

 コロネババア
 コンバーションにババアと言われることには全く腹が立たないのですが、コロネ買い占めの疑惑を被せられるのは不本意です。それに仕事とはいえコンバーションのためにやってることなのに、そんなあだ名を付けるのってひどいと訴えると、謝るどころか
「そうだね、わたしって本当にひどいね
 と、感心したような口調で言いながら、頷(うなず)くコンバーション。人にひどいあだ名を付けた反省よりも、ひどい自分を発見した驚きのほうが大きいようです。

 わたしは憤慨する気も失せ、まあ面白いからいいか、と思いました。そういえば『150円ババア』って言われたこともあったな(思いつき書店vol.56『ボロ儲けの巻』参照)。

 コロネパンの持ち運びについては、透明ではない袋を準備したのですが、運んでいない時にそれ自体が嵩(かさ)張って面倒で、まだ良い方法を考えついていません。
 でもバル・スバルの店主スバルが、「新井さんがパンを運んでいるのが通りの名物になりつつある」と報告してくれたので、こちらもまあ、面白いからいいか、です。


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こちらがSOSOCAFEです。


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ロゴもなかなか上手にできました。


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こちらがコロネです。


思いつき書店075文中

(了)

草加の、とあるおしゃれカフェの中の小さな書店「ペレカスブック」店主であり、イラストレーターでもある新井由木子さんが、関わるヒトや出来事と奮闘する日々を綴る連載です。毎週木曜日にお届けしています。

文・イラスト・写真:新井由木子(あらい ゆきこ)/東京都生まれ。イラストレーター・挿絵描き。埼玉県草加市にある書店「ペレカスブック」店主。挿絵や絵本の制作のかたわら書店を営む。著書に『誰かの見たもの 口伝怪奇譚』『おめでとうおばけ』(大日本図書)、『まんじゅうじいさん』(絵本塾出版)ほか。「この世はまだ たべたことのないものだらけ。東京に近い埼玉県の、とあるカフェの中にあるペレカスブックで、挿絵や絵本を作りながら本屋を営んでいます。生まれ故郷の式根島と、草加せんべいの町あたりを行き来しながら、食べること周りのことを書いてゆきます」

http://www.pelekasbook.com
Twitter:@pelekasbook

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「思いついたことはやってみる」と言うのは、とあるおしゃれカフェの中の小さな書店「ペレカスブック」店主であり、イラストレーターでもある新井由木子さんです。世界文化社delicious webの人気連載【まだたべ】を改題し、食べるモノに限らず、関わるヒトや出来事と奮闘する日々を綴ります。今日も思いつきで色々なことが巻き起こっていますよ。

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