note_20_卵がおいしいラーメン店

スギアカツキ【たまごのはなし】第20回 ミシュランお墨付き、絶品“たまご”が食べられるラーメン店とは!

ある日、「今日はおいしい卵料理が食べたいなあ」と思い、周りにオススメを聞いていたときのことです。卵料理といえば、親子丼やオムライスが王道でしょうか。ちょっとひねりを加えて、エッグベネディクトとかエッグマサラ(茹で卵がメインのインドカレー)とか……。うーん、イマイチだなあ、そういうメニューじゃないんだよなあ……と、悩んでいた私に、ある友人がこう提案したのです。

「たまごがおいしいラーメン屋さん、行こうよ」

えっ! ラーメン??? 確かにラーメンといえば、「煮卵」が定番ですから、“究極の煮卵”をウリにしたお店なのでしょうか。想像ができないまでも、なんとなく期待が膨らみ、その提案に従うことに。そして、東京・銀座の街をトコトコ歩いてたどり着いたのがコチラだったのです。「むぎとオリーブ銀座店」。

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あー、ここ! 確か2015年にミシュラン・ガイドで「ビブグルマン(※)」に輝いたことで一躍有名になった、女子からの支持も熱い人気店ではないですか! このラーメン店の存在は知っていたものの、連日行列必至という噂により、まだ食べたことはありませんでした。そして、訪問タイミングが昼食時を過ぎた時間帯だったため、運良くすんなりと入店することができました。

とにかくこの店のラーメンには、数え切れぬほどの徹底したこだわりが。メニューとしては、三重県桑名から毎日直送される蛤(はまぐり)を使用した「蛤SOBA」や、鳥取県の大山鶏でダシをとった「鶏SOBA」が有名で、その他にも、麺(京都の麺屋棣鄂(ていがく)との共同開発)やチャーシュー(低温調理法によるしっとりとした仕上がり)など具材・調理法などへの追求がけた外れで、神懸かっているようにさえ感じられます。

前置きはこのくらいにして、今回の主役をご紹介しましょう。「濃厚卵のまぜSOBA」です。メニューには、黄身の濃いたまごを乗せた濃厚な味、醤油テイストとあります。そして運ばれてきたのがコチラです。

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もっちり太麺。その上に、低温調理で作られた大山鶏のチャーシュー、リボン状に素揚げされたなると、三つ葉、素揚げされた長芋、海苔が乗り、真ん中には、太陽のごとく輝く濃厚色の卵黄が添えられています。そして一緒に運ばれてきたのが、味の変化を作り出す調味料類。パルメザンチーズ、タバスコ、リンゴ酢。もはやラーメンとは思えません。

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店員さんの案内通り、温かいうちにかき混ぜていただくことにしました。

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おいしい。

そのシンプルな言葉だけを捧げたい、そんな圧倒的なレベル感に脱帽してしまいました。そして何よりも素晴らしかったのが、スター級の素材が集う中で、それらを見事にまとめ、もっとも個性を放っていたのが卵黄だったということでしょう。ちなみに、使用しているたまごは、兵庫県の「日本一こだわり卵(https://www.kodawaritamago.com/)」というブランド卵で、高級ホテルや料亭でも使われているようです。

たまごがおいしいラーメン、ここにあり。卵料理のイメージに新たな風穴を開けてくれたラーメンに、心から敬意を表したいと思います。

※ビブグルマン:「ミシュランガイド」に導入された評価指標。コスパのよいオススメの店。


文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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