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イタリアと日本の先生に伝えたいこと/ドメニコ・スキラーチェ

コロナ時代の学校と子ども〜イタリアの校長先生が伝える「これから」の教育〜vol.3

イタリアの科学系名門高校「アレッサンドロ・ヴォルタ高校(以下、ヴォルタ高校)」のドメニコ・スキラーチェ校長先生著『「これから」の時代(とき)を生きる君たちへ』の発売から5カ月。新型コロナの影響による休校を乗り越えて、いかにして安全に、スムーズに学校を再開させたのか――スキラーチェ校長先生が、リアルな情報や子どもたちへの思いを綴る連載です。
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学校というのは、組織化された社会において、絶対に必要な公共事業のひとつです。輸送、健康、食料供給、保安などと同じように不可欠なものです。学校で、決まった時期に決まった行事が行われることは、仕事や宗教活動をしながら市民として生きていくうえで、秩序をもって成長していく大切さを認識させてくれます。

ですからこの2月、学校が突然中断されたことは、生徒にとって、先生にとって、それぞれの家族にとって衝撃でした。さらに、休校によって起こった直接的、間接的な結果に、社会全体が衝撃を受けました。

イタリアでは9月1日に学校が再開されましたが、クラスターが発生するのではないかと恐れられました。というのもイタリアでは、生徒、先生、その他の管理スタッフを合わせると、国内で約900万人が学校に関わっているためで、世間的に非常に難しい再開となりました。幸い、クラスターは起こりませんでした。

昨日、イタリアの教育・大学・研究省のLucia Azzolina大臣が、学校再開して最初の1か月のデータを発表しました。イタリアでは感染症の大幅な回復が見られ、平均感染者は、学生1万人あたり約2人という非常によい数値でした。これは学校がきちんとしたルールを作り、組織的に運用したことで、システムが機能したことを意味しています。しかし学校システムは複雑です。そこに関わる人たちの責任感と情熱、勇気と粘り強さがあったからこそ、機能したのです。

教室トリミング済み

イタリアと日本、いずれもの先生に伝えたいことがあります。
あなたがたの仕事に誇りを持ちましょう、ということです。あながたがたは、自分たちの生徒が社会の中で、社会のために活躍するための、非常に重要な役割を担っているのです。自分たちが次世代の形を作り、自分たちが明日の社会を作るのです。その誇りを持たなければなりません。

この何カ月も経験してきたような苦しい時こそ、私たち先生の役割はいっそう重要になります。若者に科学や人類についてだけでなく、“善良な市民であれ”と教えなければなりません。そして自分たちが危機に襲われるのではないかという恐れを抱く生徒たちに寄り添って、助けなければならないのです。

“自分たちは若いから何でもできる、無敵だ”と思っているような若者は、病気や死の恐怖に向き合うことに慣れていません。しかし感染症によって突然、家族に病気や死がもたらされた多くの若者が、これらを直視しなければなりませんでした。ウイルスのような目に見えない敵に対処することは、簡単ではありません。彼らは動揺してその危機を絶対に受け入れられず、自分たちや他人に危険な言動を起こします。それによって世の中や人から孤立することは、心理的な観点からもネガティブで潜在的に危険なのです。

入口トリミング済み

そのため、この段階で学校の果たす役割が非常に重要となるのです。
私たちは子どもたちと手と手を取り合って、現実に起こった深刻な問題に向き合うのを――理性的に、合理的に問題に直面するのを、助けなければなりません。善良な行いをすることが社会的にいかに重要かを説明し、健康を守るためのルール厳守を教育する必要があります。たとえば、マスクを着用するのは、自分自身を守るよりも、自分の両親、自分の祖父母、その他の社会全体の人たちを守ることだと。

そして最後に、ルールを尊重することは、あなたがたの自由を放棄することを意味するのではない、ということを教えなければなりません。ルールを尊重することはむしろ、すべての人の自由を守るためであり、自分と人の暮らしを美しく、楽しくするのに役立つのだと。

学校はこれらのことすべてを行わなければなりません。とても重要で、求められることが多く、厳しい仕事ですが、先生がたの勇気、情熱、知性によって私たちは成功すると確信しています。

このコラムは、毎月2回(中旬/月末)のペースで更新します。コロナからちょうど1年後、2021年3月まで続く予定です。ご期待ください。(編集担当:原田敬子)
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街の中の先生(ノーマスク)

文:Domenico Squillace(ドメニコ・スキラーチェ)/イタリア・ミラノでもっとも権威のある高校のひとつ、「アレッサンドロ・ヴォルタ高校」校長。1956年、南イタリアのカラブリア州・クロトーネ生まれ。25歳のときに大学の哲学科を卒業、ミラノの高校で26年間、文学と歴史の教師を務める。 その後、ロンバルディア州とピエモンテ州で6年間校長を務め、2013年9月から現職。26歳になる娘のジュリアはオランダ在住。趣味は旅行、読書、そして映画館へ行くこと(週に3回も!)。犬が大好き。


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