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のりたま60周年に学ぶ、進化と楽しさの重要性/スギアカツキ

“日本一有名なふりかけ”と言っても過言ではない存在といえば、丸美屋の「のりたま」
皆さんも一度は食べたこと、ありますよね? 
2020年の今年、60周年を迎え、なんとも魅力的な限定パックを発売しています。

まず1つは、「増し増しのりたま」。
基本ののりたまと比較して、海苔を増量した「のりのりたま」と、たまごを増量した「たまのりたま」が入った、なんとも嬉しいのりたまセットです。
3種類を食べ比べることで、自分がたまご好きなのか? 
それとも海苔好きなのか? 
に気づくことができる、ありそうでなかった商品設計。
だれもがわかりやすく楽しめるというポイントを、しっかり押さえてくれています。

そしてもう1つは、「たまごトリオ」。
たまごが入った3種類のふりかけがセットになっているのですが、のりたまの他に、たらこたま(たらことたまご)、うなたま(うなぎとたまご)という斬新なセットになっています。
丸美屋にはすでに「たらこ」のふりかけが存在しますから、たらこたまは想定内としましょう。
しかしながら、うなたまはなんともチャレンジングで夢を感じる組み合わせではないでしょうか。

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そもそものりたまは、たまごや海苔が高級品だった戦後すぐの時代に、旅館の朝食の雰囲気を家庭で手軽に味わえるよう開発されました。
当時は青のりや小魚のふりかけが主流だったため、原材料に「抹茶」や「こしあん」という驚きの食材が取り入れられたのりたまの登場は、かなりのインパクトがあったそうです。
さらには当時の人気アニメのシールがおまけに付くというアイデアが取り入れられたことで、一気に国民食となりました。

このような“高級品を手軽に”という発想や、子ども自身が食べ物を選ぶ楽しみを持った商品は、当時では画期的だったことでしょう。
そして、「食に楽しみを」というメッセージを、シンプルにわかりやすく発信していく姿勢は今も健在。
60周年を迎えた今も進化し続け、十分大人になった私達にもそれを強く感じさせてくれたのが、「うなたま」なのかもしれません。

今回の新顔である「うなたま」。
鰻が高騰している現代において、その憧れをほっこり満たしてくれるではないですか!
そうです、私の心を真っ先に掴んだのはこの存在感。
のりたまを子どもに食べさせる際に、そばにいる大人にも同じようにおいしい喜びを、うなたまでしっかり届けてくれることに感動したのでした。

そしてパッケージデザイン。
ジャパンブルーのパッケージに描かれている、“うなぎ鳥”のようなかわいいキャラクターは、なつかしさの中に、どこか堂々とした風格さえ感じ、元気をもらうことができるでしょう。

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さてさて気になるお味は……?
これは私なんかが評価するには及びません!
ここで説明するよりも、食べてみてのお楽しみにしておくべき素敵なお味であることは、間違いありません。
私はこのうなたまを気に入り過ぎて、限定パックを見かけるたびに数袋買うようになってしまったほどです。

簡単便利であること以上に、純粋に、おいしいこと。
さらに楽しいことや、ワクワクすることを追求・実践することは、これからの時代に最も重要なテーマだと私は感じています。
ウィズ(with)コロナの日常の中で、さまざまなことを見つめ直し、考え直し、実践することで、原点回帰できることはたくさんありそうですね。

最後にしっかりとお祝いの気持ちを捧げたいと思います。
日本の食文化を支え続けてくれるのりたまに、心より感謝を込めて……。

60周年おめでとう!

この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げていきます。【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。

文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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