note_9_たまごとはちみつの遭遇

スギアカツキ【たまごのはなし】第9回  たまごとハチミツたっぷり、幸せのゴールデンイエローパンケーキ

お祭りの屋台で見かけると、ついつい買ってしまうものがあります。それは、「ベビーカステラ」。見かけるというより、“嗅ぎつける”という能動感のほうが正しいのかもしれません。あのえも言われぬ“おいしいにおい”が、ヒトの嗅覚を刺激して足を止めさせるのだと思います。

立役者は、「たまご」と「ハチミツ」。童話の世界が似合いそうな2つの食材が出合い、じっくり焼かれることで、他にはない濃厚な甘さと香りが生まれるのです。

ふー、そんなことを考えていたら、お腹が空いてきましたよ。そうだ、この妄想をいつものホットケーキで具現化してみようじゃないですか!

大それたことをやるわけではなく、パンケーキミックスを用意し、レシピをちょっと脱線するだけ。いつもよりたまごを1個多く、そしてハチミツを最初から生地に混ぜ込んでしまいましょう。

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クルクルクル……。うん、すでに濃密。黄身から生み出されるゴールデンイエローの渦巻きは、料理人の心の扉をグルグル開いてくれることでしょう。よーく混ぜて、フライパンに生地を流し込みましょう。

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ヤッター、あの良いにおいがしてきたぞ! そして色も形も雰囲気も、すべてがプックリ満ちていて、キレイなお月様のようです。

表面にプツプツと穴が開いてきたら丁寧に引っくり返し、もう片面を焼き上げましょう。

できた! 皿にのせ、最後にトッピングです。ケーキ生地のおいしさを最大限に堪能すべく、バターの後のハチミツは、ごくごく控えめに。

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さてさて、焼きたてをいただいてみると……。

うん、おいしい! 多言を要しない、子どもの頃によく感じた、あの迷いのないおいしさです。

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濃黄のケーキ断面は、見るからにごちそう感にあふれています。

ちなみに「黄色」は、カラーセラピーの世界において、「今ここにある幸せ」というメッセージを持つ色なんだそう。ふむふむ納得。甘く優しい香りをまとった“黄色いオヤツ”は、食べる人に元気な口福感をもたらしてくれることでしょう。さあ、皆さんも、ぜひお試しを。


文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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