見出し画像

コロナから1年を振り返って/ドメニコ・スキラーチェ

コロナ時代の学校と子ども〜イタリアの校長先生が伝える「これから」の教育〜vol.10

イタリアの科学系名門高校「アレッサンドロ・ヴォルタ高校(以下、ヴォルタ高校)」のドメニコ・スキラーチェ校長先生著『「これから」の時代(とき)を生きる君たちへ』の発売から10ヶ月。新型コロナの影響による休校を乗り越えて、いかにして安全に、スムーズに学校を再開させたのか――スキラーチェ校長先生が、リアルな情報や子どもたちへの思いを綴る連載です。
vol.1から読みたいかたはこちらから。

2020年2月25日、私が校長を務めるミラノ・ヴォルタ科学高校のウェブサイトに、「学生への手紙」を掲載しました。当時、コロナウイルス感染症(Covid19)のパンデミックと戦うために国がロックダウンを決め、「学校閉鎖」という深刻で前例のない状況が生まれました。それに学生たちがどう立ち向かい、理解すればよいのか、役立つ言葉を伝えたのです。

それから1年が経ちました。今、手紙を読み直すと、私たちに起こった出来事の重大さをまだ充分に認識しておらず、純粋で素朴な文章に思えます。ただし、最後のほうに書いた「私たち人類にとって大切な心構え」を説いた部分については、その価値観は今も全く変わりません。

ヴォルタ高校の生徒のために書いたその手紙は、私の予想を超えて広がりました。報道機関で取り上げられ、とりわけソーシャルメディアによって、ほんの数日のうちにイタリア全土、そして世界中に広がったのは驚きでした。手紙を掲載した後、数日間で、イタリアとヨーロッパの新聞、イタリアの主要なテレビから数十ものインタビューを受けました。日本からも、複数のテレビからインタビューを受け、出版社の世界文化社からは、小さな本を作りたいという連絡を受けました。


それらは予想外の反響で、私は新しいメディアの力――瞬時に世界の隅々までニュースを広める能力について、多くのことを考えさせられました。一時的に有名になりましたが、本当の私は非常に控えめな性格で、名のある人ではありません。ただしそれは興味深い経験でした。未知なる人、はるか遠くに住む人々に立ち向かうことを教わり、私の能力以上に人の話を聞くことを教わりました。私の言葉に電子メールで感謝の気持ちを伝えてくれた何百人もの未知の人々とも連絡を取りました。私の言葉が読者の心に触れ、パンデミックという大きな戸惑いの渦中に慰めとなっていたことは明らかでした。私は受け取った500以上のすべてのメールに、順番に、感謝の言葉を返信しました。


その時から1年が経ちました。イタリアでは2020年の春、2ヶ月にわたり非常に厳しいロックダウンに苦しみ、自宅に2ヶ月間閉じ込められ、通りから人がいなくなり、店は閉鎖されました。私たちは困難な状況に置かれましたが、すでに感染爆発していたコロナウイルスの影響を劇的に制限する必要がありました。ロックダウンが解除された夏の間、私たちの多くは危険はすでに去ったと信じ、外出制限措置が緩和されました。そろそろ次のページをめくりたいという願望――日常への欲求、数週間のバカンスを過ごしたいという願望は、間違いだったのです。そして9月の終わりに、感染は再び拡大し、恐ろしい第二波が到着しました。


それ以降、国全体としては制限措置と緩和を繰り返していますが、原則として国の措置に頼ることはなく、地域ごとに、感染状況に応じて異なる措置が取られています。しかし、夏の終わり以降は、自分の地域から出ることを許されていません(イタリアは行政上、20の地域に分かれています)。


感染者の増加がいったん落ち着いた後、このところまた増加傾向にあります。これは昨秋、イギリスで初めて確認された変異型ウイルス、いわゆる「イギリス型変異株」によるもので、残念ながら、新聞ではすでに第三波の到来と書かれています。


学校の状況はというと、パンデミックの結果に苦しんでいます。最初の感染拡大で、ヴォルタ学校は2020年2月24日から6月8日(一学年の終了)まで閉鎖され、そのまま夏休みに入りました。新学年の初日、9月14日に学校が再開しましたが、新しい基準にともなって教室に入れる人数が減りました。私の高校では交代制で、生徒の75%が登校、残り25%が自宅からリモート学習を行いました。そして10月26日、学校は再び閉鎖され、それは3ヶ月間続きました。2021年に入ってから再開されましたが、1月26日、登校できるのは学生数の50%に制限され、3月5日、再び閉鎖の措置がとられ、いまはいつ再開できるのか分かりません。


学校の閉鎖と再開、これを繰り返すことは、学生、教師、家族、すべての人を疲弊させています。明日が不確実な状況では、私たちの仕事はうまくいきません。この危機から抜け出す唯一の、真の希望は、多くの人がワクチン接種を行うことです。イタリアでは、昨年12月末、80歳以上が予防接種を受け、その後に医療従事者と老人介護施設の高齢者が予防接種を受けました。軍隊と警察は1週間予防接種を受けている。明日(3月8日)から、学校で働くすべての人にワクチンを接種するキャンペーンが始まり、私は1週間後にワクチンを受けます。

私たちは皆、ワクチンによって、夏までにこの“無限の悪夢”から抜け出すことを、心から願っているのです。

【編集部より】 10回目の今回で、ドメニコ・スキラーチェ先生の連載は終了します。長らくご愛読いただき、ありがとうございました。
※連載をまとめて読みたいかたは、こちらから。

街の中の先生(ノーマスク)

文:Domenico Squillace(ドメニコ・スキラーチェ)/イタリア・ミラノでもっとも権威のある高校のひとつ、「アレッサンドロ・ヴォルタ高校」校長。1956年、南イタリアのカラブリア州・クロトーネ生まれ。25歳のときに大学の哲学科を卒業、ミラノの高校で26年間、文学と歴史の教師を務める。 その後、ロンバルディア州とピエモンテ州で6年間校長を務め、2013年9月から現職。26歳になる娘のジュリアはオランダ在住。趣味は旅行、読書、そして映画館へ行くこと(週に3回も!)。犬が大好き。


ありがとうございます!次回もお楽しみに!
10
世界文化社の公式noteです。書籍の発行情報やnoteオリジナル連載など。