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連載ことはじめ、のウラ話

初めまして! 世界文化社の電子書籍・雑誌チームのマルイと申します。このたび、世界文化社の公式noteを開設することになりました。次の更新が待ち遠しくなる連載、なんだか気になるオイシイ話や、おすすめの新刊情報などを、じわじわっと発信していきますので、どうぞお楽しみに!

さて早速ですが、まずはぜひ読んでいただきたいエッセイのご紹介です。

2018年から2年にわたり世界文化社のdelicious webサイトで連載していただいた、沢野ひとしさんのイラスト&エッセイが、電子書籍として発売されました。

沢野ひとしさんといえば、『本の雑誌』や椎名誠さんの著書をはじめ、“謎絵”でもお馴染みのイラストレーターさんですが、delicious webの連載では“食”に絡めたさまざまなエピソードを、イラストとともに綴っていただきました。

日本とは異なる中国の食文化、“鍋”のこだわり、地方の美味いものや、盟友とのエピソードなど、さまざまな角度から沢野節が炸裂! 連載回数を重ねるごとに挿画の数も増え、“沢野絵”ファンにもたまらない連載となりました。

エッセイの本編はこちらからお楽しみいただくとして、ここでは連載~電子書籍化にまつわる沢野さんとの裏話を、短期集中連載でお届けします。

というわけで、まずは連載が始まるきっかけから、はりきってどうぞ!


マボロシの“沢野番”

 世の中に電子書籍なんていう言葉がない頃から、『本の雑誌』でも馴染み深い沢野ひとしさんのファンだった。
 パズル雑誌の編集部を経て書籍編集部に配属された私は、勇んで沢野さんに手紙を書き、当時代官山にあった事務所を訪ねて行った。もう20年ほど前の話である。

 初対面の沢野さんは、思いがけずお洒落で物静かな印象だった。 “謎絵”を描く、いかにもハチャメチャな人、というよりは、美しい風景画やきれいな女性を描きそうな、スマートなイラストレーターさん、というイメージの方がぴったりだった。
 書籍編集の経験もなく、ただ熱意ばかりの私の話をひととおり聞いた沢野さんは、遠くを見つめながら「いいですよ」と言った。そして持参した本にサインとかわいいイラストをさらさらっと書いてくださった。

 憧れの沢野さんを前に舞い上がっていた私は、実はそのときの詳細な会話の内容をよく覚えていない。その後、何度かやりとりをしながら、いざ本を作らんと企(くわだ)てたが、残念ながらそれは叶わなかった。

“ぬっとした大きなもの”が気になる!

 担当編集者になり損ねたので、そこでご縁が途絶えてもおかしくはない。しかし幸運なことに沢野さんとの交流は、いちファンとして細々とではあったが、続いた。小さな我が家に飾られている絵のほとんどは、沢野さんの個展に出向いては、少しずつ買い求めたものであったりする。

 個展の案内や、不思議なファックスが送られてきたり、“山”の本のイベントに誘ってくださったり。時には
「“ぬっとした大きな建造物”が気になる! マルイもこれを読め」と、まるで長身の私をからかうかのように、本が送られてきたりした。
 とある秋の鎌倉での個展に夫と共に出向いた時、まずは腹ごしらえをしようと会場近くの鰻屋さんに入ると、たまたまそこで食事をしていた沢野さんに遭遇し、気前よく鰻重をご馳走していただいたこともあった。

 そんなやりとりをしながら、ナンダカンダとおつきあいが続くうち、私の中で沢野さんは「なるほど、謎の絵を描いても不思議ではない人」という印象に変わったが、その魅力的な人物への興味はいや増すばかりであった。
 コミュニケーションツールは、いつの間にか手紙やファックスからメールへ、そしてSNSへと移り変わった。
 そして私も紙の編集を離れ、いつしか電子版を作るチームの一員となっていた。

ある日、沢野さんから一本のメールが届いた

 電子書籍に電子雑誌。
 今もって馴染みの無い人にはナンノコッチャ、よくわからない代物かもしれない。なにしろ、実体がないから実感が湧かない。
「スマホでもパソコンでもタブレットでも、もちろん専用端末でも読めるから、便利ですよ」
「スマホひとつで何冊分もの本を、いつでもどこでも読めるから、重い本をたくさん持ち歩く必要がなくなりますよ」
 そう言われたって、書店で紙の本を買うような、確かな手ごたえがない。

 美しい装丁、紙の手触り、インクの匂い。ページをめくる時のワクワク感は、本に触れる指先の感触も込みで得られるもの。内容もさることながら、読書はそうやって愉しむものだ。
 そう思う気持ちもわかる。
 私自身も、もしも電子版を作る立場になければ、そうとしか考えなかったかもしれないし、紙版で得られる全ての幸福感を、電子版が保障できるわけでもないと思う。

 でも、だからといって、電子版という新しい読み方を否定するのはつまらない。
 実際、私たちの日常は、今や手のひらサイズの小さな四角い画面に捕らわれている。本のページをめくらない日はあるかもしれないが、スマホの画面を覗き込まない日はない、という人も少なくないのではないか。
 スマホからあらゆる情報を取ってくることが日常茶飯事になった今、その一端に「本(電子書籍)」が含まれていてもおかしくないし、むしろ書店に足が向かない人ほど、その小さな画面に自分の本棚を持っていてほしいと思う。

 そんなささやかな、祈りにも似た願望を抱きつつ、書籍や雑誌の電子版を作っていた私の元に、ある日沢野さんからメッセージが届いた。
 読書家の沢野さんから、ある本の感想が送られてきたのだ。篠原勝之さんの『骨風』という本である。

沢野さん「すごい本でした。(この作家を)見直しました。私も書かないとね!」
私「おおー、そうですか! 私も読みます。沢野さんも、今がまさに書きどきですね!」
沢野さん「書かせてください。食べる話がいい。世界文化社に貢献したい」

 折しも、delicious webという“食”がテーマの電子書籍を販促するサイトを立ち上げる準備をしていた私にとっては、まさに渡りに船。神様のお告げ。サンタクロースのプレゼント。
 delicious webという掲載の場が持てる、まさにちょうどいいタイミングで、沢野さんのやる気をキャッチすることができた私は、自分の幸運に感謝しつつ、すぐさま連載をオファーしたのだった。

つづく

【食べたり、書いたり、恋したり。】連載本編はこちらから(一部有料)。

連載をまとめた電子書籍版『食べたり、書いたり、恋したり。』は、Amazonほか主要電子書店にて絶賛発売中!


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