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2020年10月25日、保護者への手紙/ドメニコ・スキラーチェ

コロナ時代の学校と子ども〜イタリアの校長先生が伝える「これから」の教育〜vol.4

イタリアの科学系名門高校「アレッサンドロ・ヴォルタ高校(以下、ヴォルタ高校)」のドメニコ・スキラーチェ校長先生著『「これから」の時代(とき)を生きる君たちへ』の発売から半年。新型コロナの影響による休校を乗り越えて、いかにして安全に、スムーズに学校を再開させたのか――スキラーチェ校長先生が、リアルな情報や子どもたちへの思いを綴る連載です。
vol.1から読みたいかたはこちらから。

ヴォルタ高校の保護者の皆さま

9日前、皆さまへ、通常の学校運営が危うくなっていることをお知らせしました。学校内の問題ではなく、私たちの責任外の、管理できない学校の壁の外で起こっている出来事のために(※註)。その予言どおり、安全に登校し、対面授業を行えるかどうかの境界を越えました。ご存じのように、明日10月26日から、全員が在宅で学習することになります。

※この手紙が書かれた10月25日は、イタリアで、1日あたりのコロナウイルス新規感染者数が2万人を超えた。感染拡大のため、飲食店の営業を午後6時までに制限したり、スポーツ施設や映画館のを閉鎖すると発表した。規制は10月26日から11月24日までを予定している。

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私たちは、9月に学校が再開できるよう、6月末から対策を練り始めました。計算し、シミュレーションし、測定する、これを何度も繰り返しました。もしごみ箱に“口”があったなら、非現実的とも思われる奇妙な仮説や提案に、私たちが責任感と情熱をもって取り組んでいたと話すことでしょう。

最終的に作り上げた学校再開へのプランは、不完全だったかもしれません。ただ、子どもたちが登校する権利と感染リスクの許容範囲、その両方を考慮しながら、可能な限り妥協したうえで構築したプランでした。

学校再開に際してまず決めたことは、マスクは常に着用し、はずしてはいけないこと、高熱がないこと、人と人との口の距離を国が定めた1メートルから20%増やして1メートル20センチにすること。これを厳密なルールとしました。

よりよい方法があったかもしれませんし、私たちの努力の甲斐がなかったのかもしれません。しかし確かなことは、あなたがたの子どものために行ったことだということです。学校は子どもたちに与えられた権利です。2020年に、彼らから2度目の学校を奪う以上、それなりの結果がもたらせないようなら、あってはらならない事態だと信じています。

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学校は、どんな状況におかれても活動し続けなければならない、絶対に必要な公共事業の一つです。嵐の真っ只中で最悪な状況では、最後に閉鎖しなければなりません。その代わり、数ヶ月に2度目となると、最初に閉鎖しなければなりません。

新聞に掲載されている議論は非現実的です。政府と地方議会のどちらが責任を追うのか、もはやはっきりせず、学校は閉鎖してバールやレストランは開いたままにしておくのがノーマルだ、と議論し、納得している。私たちの国は今、道に迷っているように思えます。

ヨーロッパで最も裕福な国の5本指に入る、と自慢していた“とある国”の大統領が、「公共交通手段の存在意義は、“労働者または学生が乗ること”」と認めました。それを聞いてから、まだ1年も経っていません。夏の間、時刻表について話し合う時間は充分にあったでしょう。経済上の理由は理解していますが、学校を守ることができない国に未来はありません。なんと嘆かわしく、辛く、腹立たしいことでしょうか。

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ここ最近、あなたがた、そして私たちの子どもが涙を流し、絶望するのを見てきました。私たちは問題を抱えています。子どもたちが“生きたコミュニティ”という考えを保ち続けるのは不可能になると強く思っています。

これからの数週間、私たちは状況をしっかりと見つめていきます。誰も学校にいないとしても、学校はいつも子どもたちに開かれています。時々は実験室を使ったり状況をチェックしたりするために、バスの混雑時間を避けて登校できるよう、できるだけ速やかにトライするつもりです。

ここ数日、多くの保護者の皆さま――個人ならびにクラス全体の名前で、連帯感、尊敬の念、共感、励ましなど、私たちへの信頼の“証明書”をいただきました。これはあなたがたの良心であり、とくにこのような事態にあって全幅の信頼を寄せていただいている貴重な証しであり、後々にまで残るものです。皆さまに感謝します。どうもありがとうございました。

最後にもう1つ。これから数週間、保護者の皆さまは子どもがウイルス感染の陽性だと確認されたいかなる場合においても、私たちに迅速に報告する必要があります。また学校に検疫のためのクラスはありませんが、状態を観察し続ける必要があります。陽性だと確認されたら、その両親だけに伝え、陰性であった場合も同じように速やかに伝えます。これが非常に重要です。

いずれにせよ、私たちに子どもを任せていただいている、その信頼に値するよう、あらゆることをし続けます。どうぞご安心ください。

ドメニコ・スキラーチェ

このコラムは、毎月2回(中旬/月末)のペースで更新します。コロナからちょうど1年後、2021年3月まで続く予定です。ご期待ください。(編集担当:原田敬子)
※連載をまとめて読みたいかたは、こちらから。

街の中の先生(ノーマスク)

文:Domenico Squillace(ドメニコ・スキラーチェ)/イタリア・ミラノでもっとも権威のある高校のひとつ、「アレッサンドロ・ヴォルタ高校」校長。1956年、南イタリアのカラブリア州・クロトーネ生まれ。25歳のときに大学の哲学科を卒業、ミラノの高校で26年間、文学と歴史の教師を務める。 その後、ロンバルディア州とピエモンテ州で6年間校長を務め、2013年9月から現職。26歳になる娘のジュリアはオランダ在住。趣味は旅行、読書、そして映画館へ行くこと(週に3回も!)。犬が大好き。


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