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「ハムカツ」のバッター液の理想的な配合を突き止めた!/スギアカツキ

私は日頃から人を招いて食事をふるまうのが大好き。
気の置けない友人やその家族はもちろんのこと、最近では5歳の息子が慕う大切な友人もご招待するようになりました。
お客様にはあらかじめ、必ず質問することがあります。
それは、「好きな食べ物はなんですか?」という事前調査のようなもの。
そしてその好物をできる限り工夫して調理し、喜んでもらうのが目標で、私にとっては楽しいチャレンジになっているのです。

先日、4歳の小さなお客様からいただいたリクエストが、「ハムカツ」。
聞いたときは正直びっくりしてしまいました。
なぜなら、こんなにも広く長く愛されているハムカツに、私自身が馴染みのない人生を送ってきてしまったことに気づかされたからです。
もちろん自分で作ったこともありませんので、自信のないところからのスタートになりましたが、イメージ(妄想に近い)を頼りに、おいしいハムカツ作りに挑戦してみることにしました。

ハムカツといえば、主役のハムよりも印象に残っているのが、「」。
しっかり厚みがあって、こんがりきつね色で、薄いハムを堂々とした主菜に引き立ててくれるような力強さがあります。

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あのどこか濃厚でクリーミーな味わいは、普通の揚げ物とは少し違うように感じたので、色々調べてみたところ、「バッター液の調合」の大切さを知りました。

バッター液とは、天ぷらやフライを作るときの衣になる生地のことで、小麦粉、水(または牛乳)、たまごなどをベースに作られています。
つまり、このバッター液をあらかじめ調合して準備しておけば、テキパキとおいしい揚げ物が作れるというわけ。
英語でも「batter」という名称は共通です。

先にも述べたとおり、非常にシンプルな料理であるハムカツにおいて、バッター液の存在感は重要。
何回かの試作を経て、私の中でハムに合うバッター液がようやく完成しました。

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たどり着いた配合は、たまご1個、小麦粉大さじ4、牛乳大さじ2、マヨネーズ大さじ1/2、白こしょう少々
そこにパルメザンチーズを大さじ1加えると上質な味わいになりますが、今回は素朴さを優先することに。

作り方は、材料を全てよくかき混ぜればOK。
あとは、ハム(薄いハムなら2枚重ねに。厚いタイプを使ってもよいし、薄めのものを数枚重ねてもおいしい)の表面に小麦粉を振り、バッター液でコーティング、細かめのパン粉をまぶして揚げていきましょう。

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ハムはもともと火が通っている食材なので、両面を2分ずつ揚げる程度で十分。
大事なのは、やや高温で香ばしくカラッと揚げること。
190℃ぐらいが最適でしょう。
揚げたてを半分に切って盛り付けてみました。

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気になる小さなお客様の反応ですが、健やかな笑顔で「おいしい!」をいただくことができました。
子どもが相手となると、いつも以上に評価が気になる私は、しっかり大人になっている証拠なのかもしれません(笑)。

今回もたまごのパワーに助けられた私。
ますますたまごへの信頼感が増し、さまざまな食材ごとに最高のバッター液を追求しようと心に決めたのでした。

この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げていきます。【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。

文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
Instagram:@sugiakatsuki
Twitter:@sugiakatsuki12

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