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究極の「茶碗蒸し」を目指して/スギアカツキ

好きこそものの上手なれ

たまご料理のなかで、格別に好きなメニューがあります。それは、「茶碗蒸し」。

小さな頃から馴染みのあるのは母の味です。
まだ言葉がたどたどしかった頃に「チャームシ」と耳から覚えたせいか、小学校に上がっても茶碗蒸しのことを“チャームシ”と信じて疑わなかったことは、ちょっぴり恥ずかしいエピソードです。

そんな幼い頃からリクエストしていたメニューを、今では自分で作るようになりました。

大好きなメニューだからこそ、美味しく作れるように、日々練習を重ねています。その練習が実に楽しいのです。
材料の組み合わせや使う器、加熱時間によって仕上がりが全く違うものになるので、色々と試行錯誤しています。

ここで一度小休止、今私が一番食べたい味を、レシピにまとめてみることにしました。今回はその作り方をご紹介したいと思います。

用意する材料と作りかたのコツ

用意するのは、たまご4個。できれば放し飼いの健やかなたまごが理想的です。

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菜箸を使ってほぐしていくのですが、卵液が空気をまとわないように、切るような動きで白身をほぐすことがポイントです。

次にザルで濾(こ)します。これを面倒だと思わないのは、大好物ゆえのパワーなのかもしれません。

そして出汁と合わせるのですが、出汁は力強い鰹出汁よりはまろやかな昆布出汁が好み。650mlの出汁を加えます。

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作りたての熱々が好きなのはもちろんなのですが、実は翌日の冷えた茶碗蒸しにも目のない私。
アイスクリームを想像すればわかるように、温度が低いと味覚が鈍化するため、少々濃いめの味付けを調整するのが至難の業でもあります。

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次に具材。
茶碗蒸しといえば銀杏や海鮮具材、しいたけや三つ葉が定番ですが、たまごを主役にしたいために、具材はかなり厳選しています。

鶏もも肉(150g程度)、なると(8枚程度)、味付けされていないメンマ(10片程度)の3種で、まるでラーメンを作るかのようですよね。
鶏肉はスープ用の切り落としでも良いので、旨味のある銘柄を選ぶことが大切。

具材の数を絞ることで、それぞれの素材に対してこだわる余裕が生まれます。

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鶏肉は一口大に小さく切って、薄口醤油みりん各大さじ2で下味をつけておきましょう。
なるととメンマは食べやすいサイズに切り分けて。

これらを器に入れていきます。
鶏肉の下味タレは卵液に加え、具材を器に均等に入れていきます。

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使う器は、そば猪口
専用の蒸し椀を買わずに、お気に入りのそば猪口で作ってみたら、サイズもちょうどよく一石二鳥。

ここに卵液を器の八分目まで注ぎ、ラップをして蒸し器へ。
最初は強火で3分、続いて弱火で10分蒸しましょう。
この加熱加減で、すの入らない究極のぷるるん食感に仕上がります。

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はい、出来上がり。
母が作る“あの味”がゴールなのですが、そこに到達するのにはまだまだ時間がかかりそう。茶碗蒸しが好きな皆さん、ぜひ参考にしてみてくださいね!

レシピまとめ

【材料(そば猪口8個分)】
たまご 4個
昆布出汁 650ml
鶏もも肉  150g
なると 8枚
メンマ 10片
薄口醤油 大さじ2
みりん 大さじ2

【作り方】
(1)鶏もも肉を一口大に切り、薄口醤油とみりんで下味をつける。なるととメンマは小さく切りそろえる。

(2)ボウルにたまご割り、空気が入らないように菜箸で切るようにほぐし、ザルでこす。これを昆布出汁と合わせる。鶏肉の下味に使っていた下味タレを卵液に混ぜる。

(3)そば猪口に具材を均等に入れて、卵液を器の八分目までゆっくり注ぐ。

(4)蒸し器に入れて強火で3分、弱火で10分蒸す。
(※4個ずつ蒸す場合は2回に分ける。)

この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げていきます。【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。

文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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