見出し画像

前のめりになれる仕事っていいよね

世界文化社のdelicious webで連載していただいた、沢野ひとしさんのイラスト&エッセイ『食べたり、書いたり、恋したり。』をまとめた電子書籍版が好評発売中です! 大事なことなので、3回目ですがお伝えしておきます。

沢野さんの連載本編は、世界文化社公式noteでも一部をお読みいただけますが(マガジンはこちら)、ここでは連載にまつわる裏話的なコトをじりじりとご紹介していきます。
 連載の方向性とタイトルが決まりました、というところまでが、前回「人生とは食べたり、書いたり、恋したりするものである」でした。裏話3回目となる今回は、沢野さんのスマートなお仕事っぷりを、担当マルイがご紹介します。

こだわることと、こだわらないこと

 連載を始めてみると、それまで知らなかった「仕事人」としての沢野さんの顔が見えてきた。

 沢野さんは、締め切りは必ず守る人である。
 というより、設定した締め切り日よりも、だいたい数日早く原稿が届く。
先に美しいイラストがコンパクトな宅配便で届き、それから日を置かないうちに手書きの文章がFAXで送られてくるのが常である。

「ウェブで長い文章は誰も読まない」というのが沢野さんの持論で、文章はだいたい800字程度に収まっている。ご自分で添削・校正された上で送られてくるので、原稿用紙には校正記号や追加・削除の指示がぎっしりということもある。だがそれはよいとして、ここだけの話、芸術的な書き文字がゆえに、最初の頃は解読しづらい文字もあった。
 そういうときは、前後の文章をじっくり読んだり、過去にいただいた原稿から似たような字を探したりして、思いつく限りのそれらしい文字を当てはめてみる。少し時間を置いたり、通勤途中に頭の中で反芻したりするうちに、「あ、絶対コレだ!」とわかるときもあるが、それでもわからないときは、校正担当のフクシマさんにも相談したりして、なんとか「正解」にたどり着くこともあった。
 そんなに時間をかけて悩むぐらいなら、直接沢野さんに訊けばいいのに、という声もあろうが、苦労の跡が見える原稿ほど、「わかりません」「読めません」と簡単に白旗を揚げるわけにはいかない。どんな問題(?)を出されても受けて立とう、という私の意気込みであり、意地である(無用な意地かも、というウワサはさておき)。

 イラストは当初、そのテーマの冒頭を飾るヨコイチ(横長)の1点と、本文に入れる挿絵1点の2点以上を描いてください、とお願いしていた。
 初めの頃こそ、掲載サイズにきっちり合わせたものが送られてきたが、徐々にタテヨコの比率が怪しくなり、さらに気づいたらイラストの点数は2点どころか5~6点あるのが当たり前、という状態になっていた。
「マルイさんのおかげで、この原稿が楽しみになりました。嫌な仕事は続きません」
「前のめりで書いていきます」
 そんな嬉しいお言葉とともに送られてくるイラストの点数が増えるにつれ、この連載を楽しんで書いてくださっている沢野さんの気分が伝わってきて、私もワクワク感が増した。文章のどのタイミングでどのイラストを挿そうかと考えるのも、楽しい時間である。

裏話3回のイラスト用

連載第1回「ジャガイモ」の挿絵。イラストの周囲には、サイズの目安となる青いラインが引かれている。

 イラストが多いぶんには大歓迎! 掲載スペースに限りのある紙の刊行物とは違い、イラストも文字も、いかようにも載せられるのは、ウェブのいいところである。実はウェブの長所だけでなく、短所を察知して素早く適応することができるのもスゴイ!と思ったエピソードが、もうひとつある。

 イラストはスキャンして画像データにするのだが、連載を始めて間もない頃は、原画のような鮮やかな色合いが再現できていない、と毎回のようにお叱りを受けていた。スキャンの設定を工夫するなど、いろいろと試行錯誤して原画の再現に努めたものの、残念ながら満足していただける色の再現には至らなかった。印刷物と違ってウェブでは、ユーザーが見る環境を全く同じにすることはできないという事情もある。
 しばらくして、その事態を察したのであろう沢野さんは、再現しづらい色の傾向を見極めて、なるべくその色を使わずに表現するという工夫をしてくださるようになった。しかも、そのことを恩着せがましく私にわざわざ言ったりすることもない。業界を取り巻く環境が変化しても、それに合わせて仕事を進めていく。騒いだり嘆いたりしても何の解決にもならないことを、よくわかっておられる。

 コンテンツを作るときは、そこに関わる人がこだわりを持ち、互いの持ち場で最善を尽くすことが前提だと思う。でもそうしたからといって、全ての問題が解決するわけではない。状況を見極め、よりよいと思われる方向に適応し、変えていくことも大事であろう。それを軽々と実践してしまうところが、さすがベテランだと、秘かに感服した。

(つづく)

【食べたり、書いたり、恋したり。】連載本編はこちらから(一部有料)。

連載をまとめた電子書籍版『食べたり、書いたり、恋したり。』は、Amazonほか主要電子書店にて絶賛発売中!


またぜひ読んでくださいね!
4
世界文化社の公式noteです。書籍の発行情報やnoteオリジナル連載など。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。